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第10回【似通った英単語の選択方法(後編)】

allowかpermitかenableか

 「~することを可能にする、許容する」といった文脈では、enable, allow, permitなどを使うことができます。これらの動詞の意味は似ているため、どれを選択すればよいか迷う、という声を聞くことがあります。

 例えば、次の文脈で私がpermitを使ったところ、「permitではなく、allowまたはenableを使いたいですが、よいですか」という質問がありました。

 

前記バルブ1の保守点検や交換のために、配管2a,2b間にバルブ着脱用空隙αを確保する必要がある A space α needs to be left between the pipes 2a and 2b to permit the valve 1 to be removed for maintenance or replacement.

 もちろん、permitの代わりにallowやenableを使ってもよいです。つまり、次のいずれも、正しい表現となります。

A space α needs to be left between the pipes 2a and 2b to allow the valve 1 to be removed for maintenance or
replacement. ○
A space α needs to be left between the pipes 2a and 2b to enable the valve 1 to be removed for maintenance or
replacement. ○

 次に、それではenable, allow, permitをどのように使い分けをすればよいのか、という疑問が寄せられました。この疑問に回答するとともに、似通った単語から訳語を選ぶ際の考え方について、説明します。

辞書の定義の比較だけでも見えてくる違い

 最も大切で基本的なことは、丁寧に辞書を引くことです。その際、1つの辞書ではなく、複数の辞書を参考にすることが大切です。

 今回は、『ウィズダム英和辞典』と『日外ビジネス/技術実用英語大辞典』を使って、それぞれの単語の定義を調べてみます。

<『ウィズダム英和辞典』のallow, permit, enableの定義と例文(抜粋)>
allow
1(a) [allow A to do]<人が>A<人>に…するのを許す(⇔forbid)(過去の出来事を許してやるforgiveと違い、これから許可を出すこと)。(妨げずに)A<人・物・事>に… させる(let); [allow (A) B]<人などが>(A<人など>に)B<行為・物>を許す、認める
◆His parents allowed him to study abroad. 両親は彼が留学するのを許した
◆You are not allowed to smoke here. ≒Smoking is not allowed here. ここは禁煙です

permit
1. <人・団体・規則が>…を許可する、許す(authorize)(⇔prohibit; →allow); [permit A B] A <人>にBを許可する (5)A<人>が…することを許す
◆Smoking is not permitted in the room. この部屋は禁煙です
◆He permitted his car to be used. 彼は自動車を使うことを許可した
◆His blood alcohol exceeded the permitted level. 彼の血中アルコール濃度は許容量を超え(てい)た

enable
1. [enable A to do]<物・事・人が>A<人・物・事>が…することを可能にする、Aが…する機会[許可]を与える
◆Medical advancements have enabled people to live longer. 医学の進歩により人々はより長生きできるようになった(≒Thanks to medical advancements, people have been able to live longer.)

 この辞書の定義から、allowは、「許容する」「~させる」を意味し、letにニュアンスが近いこと、permitは「許可する」、一方enableは「許可や機会を与える」「可能にする」を表す、ということが分かってきます。

 また、『ウィズダム英和辞典』には、類義語の解説欄があり、そこに、「allowとlet, permit」について、次の記載がありました。

<「allowとlet, permit」(『ウィズダム英和辞典』より)>
allowは書で「…してもいいことにする」といった容認を表す。letは「したいようにさせてやる」の意で、話で最も普通に用いられ、不定詞にはtoが付かない。permitは最もかたく、書面、規則、決定などにより、「公式に認める」ことを意味する。

 この記載からも、上で触れたような、allowとpermitの違い、またletとの関係が見えてきます。
 なお、辞書の説明は、言葉だけを鵜呑みにするのではなく、定義や説明から何が読み取れるかを考えることが大切です。例えば、この解説では、permitは「公式に認める」を意味する、とありますが、このような説明は、『ウィズダム英和辞典』が技術系の辞書ではなく一般辞書であるためと考えられます。この「公式に認める」という説明から分かることは、permitが、比較的堅い文書で使われる可能性の高い単語である、ということです。
 技術的な内容を表す際には、permitは、「公式に認める」ではなく、allowと同様に「許容」の意味を表すことができます。そのことは、次の『日外ビジネス/技術実用英語大辞典』の説明からも分かります。

 それでは、『日外ビジネス/技術実用英語大辞典』の説明を見てみましょう。

<『日外ビジネス/技術実用英語大辞典』のallow, permit, enableの定義と例文(抜粋)>
allow
1. 許可する、認める、与える、可能にする、(妨げないで)~させる、受け入れる、対処する
●多くの辞書には「可能にする」の訳語がないが、〈物〉が主語の場合はほとんどこの意味で用いられる。類語のpermitについては、どの辞書にも「可能にする」の語義がある。allowもpermitも「可能にする」の意では同じように用いることができる。
◆Allow the cutter to rise to its full height. カッターを最高位置まで上昇させてください
◆This will allow the motor arm to rise to the "up" position. これにより、モーターアームは「上」位置まで上昇できるようになる

permit
1. ~を許す、許可する、認める、認可する、許認可する、~に~させる〈to do〉、~を可能にする; (時間, 健康, 事情などが)許す、都合がつく
◆A bearing permits free motion between moving and fixed parts. ベアリングは、可動部品と固定部品の間の自由な動きを可能にする

enable
〈to do〉 ~を可能[容易]にする、(~する)権限を与える
◆The trackball's three-button design enables either left- or right-hand operation. このトラックボールは、ボタンが3つある設計[構造]なので、左手右手のいずれでも操作が可能である

 この辞書の定義から、allowとpermitが両方とも「可能にする」の意味で使えることが分かります。また、enableは「可能にする」「容易にする」といった意味で使えることが分かります。

 また、『日外ビジネス/技術実用英語大辞典』は技術系の辞書ですので、技術系の例文とともに、単語の使い方に関する情報が含まれていて便利です。「多くの辞書にはallowに「可能にする」の訳語がないが、物が主語の場合はほとんどこの意味で用いられる」、といった説明は、重要な情報です。また、「allowもpermitも「可能にする」の意では同じように用いることができる」、といった、有益な情報も載っています。

意味を把握できたら自分の使い方を決める

 これら2つの異なる辞書(一般的な辞書と技術系の辞書)の説明から、allow, permit, enableについて、次のように、まとめることができます。

<まとめ>
■allow, permit v.s. enable(allowやpermitを使うか、それともenableを使うか)
 allowとpermitはいずれも「許容」を表す一方で、enableは文字通り「可能にする」を表す。積極的に、プラスの意味を込めて「可能にする」を表したい場合にはenable、それほど積極的に表す必要がない場合(let(放置する)ほどは消極的でないが、enableほど積極的でない場合)には、allowまたはpermitを使とよい。

■allow v.s. permit(allowとpermitの比較)
 allowには「妨げないで~させる」という意味があることを考えると、permitに比べると、allowはlet(放置する)に近いニュアンス。一方permitは、enableのような「プラスの意味を込めた可能にする」は表さないものの、allowに比べると、積極的。
 その他の違いとしては、permitは、より堅い語。
 allowを使うと自然な英語となる一方で、技術文書とは十分に堅い書である(正式表現を好む文書である)ので、permitを使っても、特に問題は無い。

 このようにまとめた上で、私個人は、文脈に応じて、積極的にプラスの意味を込めて「可能にする」を表したい場合にはenable、それ以外の場合にはpermitを使うことがあります。
 なお、allowとpermitについては、翻訳者や翻訳学習者の英文を見ていると、大半がallowを使われ、permitを使われることは非常に少ないように思います。そのことからも、allowが使いやすい一般的な単語だということが分かります。私個人は、allowとpermitについて、読み手の目を止めず、自然に流して読んで欲しいような文脈の場合には、allowを使用します。そのような理由がない場合、「~を許容する」の意味ではpermitを使うことがあります。

正確・明確に書くために―複数の辞書を比較して意味をつかみ、自分の基準を持って単語を選択する

 辞書でしっかりと調べ、理由付けをして単語を選択すれば、各単語について深く理解できるとともに、適当に色々な単語を使ってしまうことが無くなります。その結果、使う単語の数が減ってきます。使う単語の数が減れば、一貫性を持って使える可能性が高まります。また、このように理由付けをしながら単語を選択すると、人間の頭は、訳語の選択を記憶します。その結果、翻訳支援ソフトといったツールに頼らなくとも、訳ブレや誤訳が少なくなり、正確、明確に書けるようになると思います。

【似通った英単語の選択方法(後編)】のPOINT

  • 辞書を参考にしながら、自分の基準を明確に持って単語を選択する。基準を持って単語を使う努力が、英語の理解を深め、訳ブレを防ぎ、スキルアップにつながる。
  • 積極的にプラスの意味を込めて「可能にする」を表す場合はenable、消極的な場合は、allowまたはpermitを。また、allowとpermitを比較すると、allowは使いやすい一般語で、意味はletに近く、比較的消極的。一方permitは堅く、allowに比べると積極的。技術文書では堅い言葉の使用が可能なので、permitを使ってもよい。
  • 個人的には、プラスの意味を強く込めたい場合にenable、そうでない場合にはpermitまたはallowを使用。なかでもallowは、単語を目立たせず、自然に表現したい場合に使う。

目次

本連載は、日本工業英語協会による機関紙『工業英語ジャーナル』に2009年6月から2014年6月にわたって連載した「日英翻訳スキルアップ」(中山裕木子著)を元に、加筆修正したものです。

中山 裕木子著 外国出願のための特許翻訳英文作成教本

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