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第16回【注意したい日本語―「例」にまつわる表現】

【注意したい日本語―「例」にまつわる表現】

 「例」を含む日本語として、「~が例として挙げられる」、文頭の「一例として」、文中の「~の一例としての~」などがあります。これらの処理方法を説明します。またさらに、「~の例」の英訳、そして「例えば」の注意点にも触れます。

「~が例として挙げられる」をスッキリ訳す

 技術文書において、「~が例として挙げられる」「~が例として知られている」といった表現がよく見られます。これらを英訳する際、「例として」にas examplesが使われてしまうことがあります。「例として」にas examplesを使うと、その先の「挙げられる」や「知られている」を簡潔に訳すことが難しくなり、結果として、英文全体が長くなってしまったり、不自然な英語になってしまったりします。
 例を見てみましょう。

例1:「このようなビヒクルの例としては、ジメチルスルホキシドおよび酢酸が挙げられる。
ありがちな英訳:
As examples of such vehicles, there are dimethyl sulphoxide and acetic acid.

解説:「~として」にそのままasを使った直訳。語数が多い。As examples of…と書き出すと、「~が挙げられる」が訳しづらくなり、there are構文などを使うことになってしまう。There is/are構文は、視点がはっきりしないので多用は好ましくない。

リライト案:
Examples of such vehicles include dimethyl sulphoxide and acetic acid.

解説:Examples include…は、例示の必須表現。SVOを使って明快に例示することができる。

例2:「IC チップの接続技術の例として、ワイヤボンディングとフリップチップが知られている」
ありがちな英訳:
As examples of the interconnection between IC chips, wire bonding and flip chip are known.

解説:「~として」にasを使って書き出した例。後半は「知られている」をそのままare known.と訳すことになる。文法的にも正しく、大きな問題は無いように見えるが、日本語からの直訳の響きが残る。英文だけをじっくりと眺め、何度かリライトすることにより、自然な英文に修正が可能。

<リライト第1段階>
Wire bonding and flip chip are known as examples of the interconnection between IC chips.
*コンマによる句を後ろに移動することにより、主部と述部のバランスを整えるとともに、和文との対応をずらす。

<リライト第2段階>
Wire bonding and flip chip are known examples of the interconnection between IC chips.
*known as exampleのasを削除し,自然な英語を目指す。「~の例として知られている(are known as examples of…)」を「~の知られた例である(are known examples of…)」に変更したことになる。

<最終リライト案>
Known examples of the interconnection between IC chips are wire bonding and flip chip.
*英文の主語を、既出情報であるinterconnectionに戻す。

解説:訳した英文を見ながら少しずつリライトすると、楽に、自然な英語への改善が可能。なお、wire bonding and flip chipを主語にするほうが前後の文脈上ふさわしい場合には、第2段階のリライトで終えると良い。

「~が例として挙げられる」のまとめ: 例示には、基本表現であるExamples include___.(例として~が挙げられる)やExamples of…include___.(~の例として~が挙げられる)のSVO表現が最適。類似表現としてExamples are___.(例として~がある)があり、その変形のKnown examples of … are ___.(~の例として~が知られている)なども可能。基本表現Examples include___.は文脈に応じて各種アレンジが可能。

文頭の「一例として」の自然な英訳を目指す

 文頭に「一例として」を置き、「一例として、~は~である」などと表現されることがあります。この表現の英訳には、「As one example, 」が使われることが多いようです。決して間違いではありませんし、特に不自然な表現というわけでもありませんが、少しの変更で、より自然な英語に改善することが可能です。
 例を見てみましょう。

一例として、比較回路9の出力信号は、比較回路10にそのクリア信号として供給される。」
ありがちな英訳:
As one example, the output signal of the comparison circuit 9 is provided to the comparison circuit 10 as a clear signal.

解説:間違いではないが、文頭のAs one exampleをもっと自然な表現に変えられないかを検討したい。

リライト案:
In one example, the output signal of the comparison circuit 9 is provided to the comparison circuit 10 as a clear signal.

解説:In one example、つまり「ある例では」と書くことで、自然な英語となる。「~として」にとらわれず、発想を変えると良い。

文頭の「一例として」のまとめ:
As one example,→In one example,に変更することで、格段英語らしくなり、背後に見えていた日本語が消える。

「~の一例としての~」をほんの少しだけ工夫する

 文中で、「~の一例としての~」という表現を使うことがあります。これを直訳すると、as one example of…となります。正しい表現ですが、ほんの少しだけ、工夫をすることで、英語らしく変更することができます。
 例を見てみましょう。

「図6は、記録物の一例としてのID証の例を概略的に示す。」
ありがちな英訳:
Fig. 6 schematically shows an ID as one example of a recording object.

解説:これでも十分に正しいが、as one exampleの部分の数詞(one)が目立っている。

リライト案:
Fig. 6 schematically shows an ID as an example of a recording object.

解説:one example→an exampleに変更すると、自然な英語となる。

「~の一例としての~」のまとめ:
as one example of…→as an example of…に数詞を変更することで、流れるように読める、自然な英語表現となる。

その他①:「~の例」の英訳例をネイティブ表現から学ぶ

 次に、「~の例」という表現が文中に見られることがあります。「~の例を示す」などという文脈であって、「~」にあたる名詞は、単数の場合や複数の場合、また特定の場合や不特定の場合があり、「例」も単数の場合や複数の場合があります。
 ここでは、「~の例を示す」に対応する英語を、米企業による英文(Apple Inc.による特許文書の抜粋を使います*)から、見てみましょう。

例文:(米国特許番号8,331,916,「Image selection for an incoming call」をタイトルとした発明を記載する文書からの抜粋)
①FIG. 1 is a block diagram of an example system and method for selecting an image of a caller associated with an incoming call from a pool of images of the caller.
「図1は、~するためのシステムと方法の例を示すブロック図」

②FIGS. 3A-3B show examples of methods for filtering a located plurality of caller's images prior to randomly selecting one or more images from the plurality.
「図3Aと3Bは~するための方法の例を示す」

③FIG. 4 shows an example of a method for displaying the randomly selected one or more caller's images.
「図4は~するための方法の例を示す」

解説:「~の例」にあたる部分を見ると、①「example+名詞」として、名詞の前にexampleを直接羅列する方法、②「examples of+複数名詞」としてofを使って丁寧に「~の例」を表す方法、そして、③「an example of+単数名詞」の3種類の表現が見られる。②は複数名詞(methods)に対して「例」を使う場合であり、単複の一致により「例」(examples)のほうも、複数形としている。なお、ofの後ろの冠詞は誤って落ちやすいが、③のように単数名詞が不特定の場合、ofの後ろには不定冠詞をきちんと入れる必要があることも分かる。

「~の例」を表すネイティブ表現から分かること:
- 前置詞ofを使って、A of B=「BのA」として丁寧に書く。「examples of+複数名詞」「an example of+単数名詞」など、それぞれの名詞について、単複を適宜決めながら使用する。ofの後ろの名詞が単数で不特定の場合、ofの後ろの不定冠詞を忘れずに入れる。なお、ofの後ろの名詞が特定すべきものの場合にはtheを置くことができる。
- また、「example+名詞」、で略式に「~の例」を表すことも可能。an example system(「システムの例」)などと書く。名詞の羅列により、exampleを形容詞化して使っている。なお、an example structure(構造例),an example circuit(回路例)など、種々名詞に利用可能。

その他②:「例えば」を表すfor exampleとe.g.による例示の挿入

 最後に、「例えば」を表すfor exampleにより、文中に例示単語を挿入する場合について、触れておきます。また、「例えば」を意味するラテン語「e.g.」の使用についても触れます。
 文中にてfor exampleを使って例示単語を挿入する場合、コンマの有無が不適切となってしまうことがあります。また、丸括弧内にて「例えば」を表す場合に、for exampleを意味するラテン語の「e.g.」を使うことができますが、こちらも、コンマの有無が不適切となってしまうことがあります。この点については、化学分野のスタイルガイドである『ACS スタイルガイド』に、参考になる記載があります。

 『ACSスタイルガイド』によると、for exampleを文中に挿入して使う場合であって、for exampleの後ろが1つの単語または単語のリストの場合、コンマで開始して、例示を終えた箇所にもコンマを付すのが正しい使い方です。この後ろのコンマが、抜けてしまいがちです。
 また、丸括弧内にて「例えば」を表す場合の「e.g.」について、このe.g.の後には、コンマを付すのが正しい使い方です。このe.g.の後のコンマも、抜けやすいことがあります。『ACSスタイルガイド』の関連箇所を記載しておきます。

<The ACS Style Guide, 3rd Edition,P117,“Punctuation, Comma”より>

Use commas to set off the words “that is”, “namely”, and “for example” when they are followed by a word or list of words and not a clause. Also use a comma after the item or items being named. Use a comma after “i.e.” and “e.g.” in parenthetical expressions.

例文:
Many antibiotics, for example, penicillins, cephalosporins, and vancomycin, interfere with bacterial peptidoglycan construction.

These oxides are more stable in organic solvents (e.g., ketones, esters, and ethers) than previously believed.

「例えば」を表すfor exampleとe.g.のまとめ:
for exampleを使って文中に例示単語を挿入する際、コンマで挿入を開始して、コンマで例示を終える。丸括弧内にてe.g.を使う際、e.g.の後にはコンマを置く。

正確・明確に書くために―簡単と思われがちな各種「例」表現も大切に扱う

 「例」を含む様々な表現について詳しくとりあげました。文全体を使って例示するExamples include___.は、SVOを使った、英語らしい、明快な表現です。他には、「一例として」「~の一例としての~」「~の例」「例えば」など、普段それほど苦労して訳す部分ではないような表現にも、「3Cの見せ所」が多くひそんでいます。簡単と思う表現も大切に扱い、背後に日本語が見える英語を避ける工夫をすることにより、正確で明確な英文が書けると思います。

【注意すべき日本語―「例」にまつわる表現】のPOINT

  • 普段見逃してしまいそうな一見簡単な表現にも着目し、日英の違いを把握しながら、自然な英語表現を目指す。奥深い3Cを追求する気持ちが、スキルアップにつながる。
  • 「~が例として挙げられる」にはExamples include___.やExamples of…include___.のSVO表現を使う。またExamples are___.やKnown examples of … are ___.などのSV表現も可能。
  • 文頭の「一例として」は、In one example, と書くことで、英語らしく表現。
  • 「~の一例としての~」は、oneを使わずas an example of…と書くことで、英語らしく表現。
  • 「~の例」は「examples of+複数名詞」や「an example of+単数名詞」など、ofを使って丁寧に表現。「例」の単複、そして「名詞」の単複と冠詞はその都度選択する。なお、「example+名詞」による名詞を羅列した略式表現も可能。
  • 「例えば」のfor exampleは、文中ではコンマで挿入を開始して、コンマで例示を終える。丸括弧内ではe.g.が使え、e.g.の後にはコンマが必要。

<参考文献>
・The ACS Style Guide, 3rd edition, Oxford University Press, 2006

目次

本連載は、日本工業英語協会による機関紙『工業英語ジャーナル』に2009年6月から2014年6月にわたって連載した「日英翻訳スキルアップ」(中山裕木子著)を元に、加筆修正したものです。

中山 裕木子著 外国出願のための特許翻訳英文作成教本

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