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第17回【「推定される」を表す各種表現】

 技術報告書や技術論文では、「推論」を書くことが多くあると思います。つまり、「~であると推定される」「~であるとみられる」などと、不確定なことを、著者の意見として、書くことがあります。これを英語で表すためには、比較的多くの表現があります。一つの定型表現があれば楽なのですが、実際は、状況や文脈、表したい可能性の高低に応じて、適切な表現を、その都度選択する必要があります。

 一例として、「調査報告書」からの次の例文について、表現例を検討します。

●今回検討する例文(不具合に関する調査報告書より):
「(調査の結果、)パイプからの漏れは、腐敗による穴によって生じたと推定される」
                               腐敗による穴=corrosion pitting

ありがちな英訳It is thought that…は不可

 はじめに、よくない表現をあげます。次のように書きたくなった場合、テクニカルライティングの3Cの基本に立ち返り、明確・簡潔に表現することを検討されるとよいでしょう。

よくない英訳例:
(1)It is thought that the leakage from the pipe occurred due to corrosion pitting.
(2)It is assumed that the leakage from the pipe was caused by corrosion pitting.

問題点:(1)では、表現It is thought…により、誰の意見かが分からなくなっている。「一般の人が思っている」や「今回の調査とは異なる状況でそう思われている」というように理解され、混乱を招く可能性がある。(2)では、(1)の問題に加えて、assumedという動詞が好ましくない。assumeは「確固とした根拠が無い状態での仮定」を表すため、調査の結果としては不適切。なお、英英辞書には”If you assume that something is true, you imagine that it is true, sometimes wrongly.” Collins COBUILD)とある。

 なお、これらのIt is…that構文は、Although it was originally thought (assumed) that the leakage from the pipe was caused by XX, we have later identified the cause as corrosion pitting.のような表現で、今回の結論とは異なる内容を表す部分であれば、使用が可能でしょう。

 それでは、適切な英語表現の例を見ていきましょう。

人を主語にした強い言い切り表現―責任の所在を明らかにする

 はじめに、人を主語に使った「強い言い切り表現」について説明をします。「技術」や「もの」について書く技術文書で、あえて「人」を主語にする文章というのは、責任の所在を明らかにし、強い印象を与えます。例文を見てみましょう。

表現例①:動詞で言い切る
(1)We have concluded that the leakage from the pipe was caused by corrosion pitting.
(2)We have identified the cause for the leakage from the pipe as corrosion pitting.

解説:(1)(2)ともに、助動詞や副詞などを入れずに動詞を単体で使うことにより、断定的に表現。(1)では、that節内を過去形にすることで、今とは切り離された過去の事実として、遠い視点から書くことにより、客観性を高めている。(2)ではidentifyという明快な動詞を使うことで、短く簡潔に表現。

 なお、技術論文や技術報告書では、十分な調査やデータに基づいて推論を書くわけですから、これくらい強い表現も、使用が可能です。特に、例えば報告書の結論部分などでは、「人」を主語にすることであえて責任の所在を明らかにし、強く明快に書くことにより、誠意を尽くして問題や研究に取り組んでいることを示すことができます。そのような文書を、読み手は、安心して読むことができるでしょう。

表現例②:助動詞で動詞にフィルターをかけ、断定を避ける
(1)We have concluded that the leakage from the pipe may have been caused by corrosion pitting.
(1)’We have concluded that the leakage from the pipe might have been caused by corrosion pitting.
(2)We have determined that the cause for the leakage from the pipe can be corrosion pitting.

解説:that節内に助動詞を使うことで、不確定さを示し、非断定的に表現。なお、助動詞mayは、起こりうる可能性を低く位置づける英語ネイティブが多い。(1)ではmayをthat節内に使うことで、「~かもしれない」を表す。なお、(1)’のように助動詞の過去形mightを使うと、助動詞過去形が持つ「仮定法」のニュアンスにより、mayよりも可能性がさらに低くなる、または「遠まわし」な表現となる。(2)で助動詞canを使うと、may, mightを使う場合よりも確信の度合いが上がり、「~である可能性がある」を表す。

 このように、助動詞を使うこと、また表したい推量の度合いに応じて適切な助動詞を選択することで、責任の所在を明らかにしつつ、断定を避けて表現することが可能です。こちらも、技術論文や技術報告書で広く使える好ましい表現となります。

無生物主語―「調査(結果)が~を示す」と書く

 次に、「人」を主語にせずに、無生物を主語にして書く表現について、説明をします。「調査」や「結果」といった無生物を主語にすることにより、「人」の存在を出さずに客観的に表現できます。「無生物主語・能動態」で書くことができるため、簡潔で明快です。「~を示す」という動詞部分と、さらにthat節内の助動詞の有無やどの助動詞を使うかによって、確信度、起こりうる可能性を調整することができます。
 例文を見てみましょう。

表現例:動詞の組み合わせ、助動詞の有無や組み合わせで詳細を表現する
(1)The investigation demonstrates that the leakage from the pipe was caused by pitting corrosion.
(2)The investigation shows (revealed) that the leakage from the pipe was caused by pitting corrosion.
(3)The investigation indicates that the leakage from the pipe may have been caused by pitting corrosion.
(4)The investigation implies that the leakage from the pipe might have been caused by pitting corrosion.
(5)The investigation suggests that the leakage from the pipe was caused by pitting corrosion.

解説:(1)(2)(5)は、that節内で動詞により断定。(3)(4)では助動詞を組み合わせることで可能性を調整し、非断定的に表す。なお、主語investigation(調査)は、analysis, test, test results, など,文脈に応じて変更可能。動詞の選択は、demonstrateを使うと、「起こりうる可能性」が非常に高くなり、show, reveal, indicateは比較的高く、imply, suggestを使うと可能性は低くなる。

 この種の表現では、動詞の選択と、後半の助動詞の選択を組み合わせることにより、不確定さを自在に調整することができます。その際、各動詞が表すニュアンスや「起こりうる可能性」、そして各助動詞が表す可能性やニュアンスを、正しく理解しておくことが大切です。
 動詞が表す起こりうる可能性を並べるとすれば、個人的な英語ネイティブ調査によると、demonstrate→show→indicate→imply→suggest(上の(1)→(5))の順に弱くなります。ネイティブ調査の詳細については、ここでは情報を割愛します。

 なお、各種助動詞が表す「確信の度合い」は、書き手の気持ちとして、must→will→should→can→mayの順に弱くなると考えられます(『技術系英文ライティング教本』中山裕木子著の「助動詞」より)。これらの各種助動詞から、内容に応じて、適宜選択するとよいでしょう。なお、助動詞の過去形mightは、mayよりも低い可能性を表します。

便利な表現seemとseeminglyを使う

 「~と思われる」「~のように見える」を表す便利な表現に、seem(思われる,~のように見える)とseemingly(見たところ~である)があります。これらの表現は、事実を表す文章に対して、正しく追加をするだけで、「著者が思う」ということを、簡単に表すことができます。例文を見てみましょう。

表現例①:動詞seemを使う
(1)The leakage from the pipe seems to have occurred due to corrosion pitting.
(2)The cause for the leakage from the pipe seems to be corrosion pitting.  など

解説:The leakage from the pipe occurred due to corrosion pitting.やThe cause for the leakage from the pipe is corrosion pitting.という事実を表す「言い切り」の文章に対して、単に動詞seemを正しく挿入することで、著者が思っていることとして表せる。なお、seemを入れる箇所が受動態である場合には、読みづらくなる。つまり、The leakage from the pipe seems to have been caused by corrosion pitting.と書くと、複雑で読みづらい。その場合は、表現be caused byをあきらめ、occur due toを選択するなど、利点と欠点を加味して読みやすさで文章を決める。

表現例②:副詞seeminglyを挿入する
(1)The leakage from the pipe occurred seemingly due to corrosion pitting.
(2)The leakage from the pipe was seemingly caused by corrosion pitting. など

解説:事実を表す「言い切り」の文章に対して、動詞の箇所に副詞seeminglyを修飾語として挿入することで、著者の意見とし表すことができる。そのまま挿入するだけで使えるので、さらに便利。

その他の表現:be presumed to(~と推定される)やbe considered to(~と思われる,考えられる)は使用可能、supposeとguessは不適切

 「推定される」を表す他の表現として、guessやsupposeといった動詞が検討されることがあります。ところが、guessは、「確信なしにあることを当て推量する」という意味になりますので、技術論文や技術報告書では、不適切です。supposeは、「仮定する」のニュアンスに近く、また口語的ですので、技術論文や報告書では好ましくありません。報告書などでのsupposeの代わりの表現として、文語的なpresumeがあり、「想定する」を表します。堅く難しい言葉であるとともに、assumeやsupposeと似た「仮定する」のニュアンスに近いため、あまり多く使える言葉ではありませんが、文脈によっては、使用が可能です。また、「~と思われる」を表すconsiderについても、使用が可能です。
 これらの動詞presume, considerを使う際には、It is presumed/considered that X…のような仮主語itを使う形ではなく、X is presumed/considered to…のように、表す事実の近くに動詞をおくことで、語数を少なく表現するのがよいでしょう。

表現例:presume, considerを使う
(1)The cause for the leakage from the pipe is presumed to be corrosion pitting.
(2)The cause for the leakage from the pipe is considered to be corrosion pitting.

解説:presumeは「想定する」、considerは「思う」。It is presumed/considered that…と書いて語数を増やすのはよくない。

正確・明確に書くために―表現の幅を広げて自由に英語を扱う

 「推測される」を表す各種表現について、動詞だけで言い切る表現、助動詞を組み合わせてぼやかす表現、そして、「人」の主語を組み合わせて責任の所在を明らかにする、「調査」や「結果」といった「無生物」を主語にして客観的に表す、などの種々の工夫が可能です。また、複数の動詞や複数の助動詞から選択することにより、書き手が表したい「可能性」の度合いを、自由に調整することが可能です。「推測される」という日本語に対応する英語表現を一つに決めずに、文脈や、その時々の文書の「戦略」に応じて、適切な表現を選択することが大切です。表現の幅を普段から広げておき、必要な際に、じっくりと適切な表現を検討することにより、より正確で、より明確に、書けると思います。

【「推測される」を表す各種表現】のPOINT

  • 「人」の主語、無生物主語、動詞、助動詞の組み合わせにより多数の表現を取りそろえることで、文脈に応じた適切な文章を書く。表現の幅を広げ、英語を自由に使いこなす努力が、スキルアップにつながる。
  • 「人」を主語にした責任の所在を表す強い表現は、技術論文、技術報告書などの、重要箇所にて使うことが可能。助動詞の有無により、断定・非断定を選択するとともに、表したい可能性の高低も自由に調整。We have concluded/identified…, We have concluded/determined that __ may/might/can…などと表現。
  • 「調査」や「結果」などの無生物を主語に使う文章は、主観を入れずに描写できるため、好ましい。可能性の高低は、動詞と助動詞の組み合わせにより、詳細に調整が可能。The investigation shows/demonstrates/indicates/implies/suggests that___may/might/can …などと表現。
  • seem, seeminglyにより、著者の考えであることを簡単に表現することも可能。be thought toなどを使った場合のありがちなニュアンスのずれ(誰が「思っている」のかが分からなかったり、「一般の人が思う」を表す)を回避。動詞が表す事実に対してseemやseeminglyを挿入する。
  • presume, considerを使いたい場合には、It is presumed/considered that…ではなく、X is presumed/considered to…の形で書くことで、語数を減らす。

目次

本連載は、日本工業英語協会による機関紙『工業英語ジャーナル』に2009年6月から2014年6月にわたって連載した「日英翻訳スキルアップ」(中山裕木子著)を元に、加筆修正したものです。

中山 裕木子著 外国出願のための特許翻訳英文作成教本

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