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第5回【前置詞にまつわる疑問や問題―1. 「~の」を表すofとfor】

 英語ライティングの初心者から日英実務翻訳者にいたるまで、前置詞に関する様々な疑問が寄せられることがあります。例えば、「「~の」という場合のofとforの使い分けが分からない」という疑問、「onは接触していない場合には使ってはいけないのか」という疑問、「「AのB」という場合に、「B of A」なのか「A of B」なのか混乱する、また「AのB」を表すのに「AB」や「A’s B」はどうか」といった疑問が寄せられます。
  また、日本人翻訳者などが書いた英文をチェックしていると、前置詞の誤った使用を目にすることがあります。例えば、文脈を考えずに「~の~」をofで直訳した誤り、「~によって」という日本語に対して安易にbyを使って誤ってしまった場合などです。
 このような前置詞にまつわる疑問や問題について、一つ一つ取りあげ、説明します。

疑問:「~の」という場合のofとforはどちらを使えばよいですか。
回答:どちらでもよい場合もありますが、ダメな場合にだけ、注意しましょう、またニュアンスの違いを知っておきましょう。

 テクニカルライティングのセミナー参加者から、次のような質問を受けました。

質問:ofとforのどちらを使えばよいか、よく迷います。例えば、「核兵器開発計画」は、plan for development of nuclear weapons が正しいと思うのですが、plan of development for nuclear weapons などとしてしまいそうです。簡単な使い分けの指針のようなものがあれば、教えてください。

基本に忠実に日本語に直すことでチェックする

 まず、前置詞ofとforの基本として、ofは、「分離はしているが、性質は変わっていない」という意味から、「所属」や「所有」など広範囲にわたる関係を表します。一方、forは、「到達点を含まない方向」を表すことから、「目的」などを表します。このように考えると、2つは全く異なる前置詞です。ですが、上の質問のように、文脈によっては、混同してしまうことあるようです。
 そこで、混同しそうになった場合には、ofとforのいずれも使ってみた上で、それぞれの前置詞の基本事項に忠実に、再度日本語に訳してみるとよいと思います。そうすることで、不適切な場合があれば、気付くことができると思います。
 例えば、次のように行ないます。

(1) plan for development of nuclear weapons(核兵器の開発のための計画)○
(2) plan of development for nuclear weapons(核兵器のための開発計画)×

解説:(1)は「核兵器の開発のための計画」、(2)は「核兵器のための開発計画」と訳せる。(2)の場合、「核兵器自体の開発」ではなく、「核兵器のための別のものの開発」とも読めてしまうため、不適切な表現と分かる。

ニュアンスの違いを知る―forは「遠い関係」、ofは「近い関係」

 「核兵器開発計画」は、plan(計画)の後に前置詞ofまたはforを使って、次のように表現することができます。(1)と(2)では、ニュアンスが少し異なります。

(1) plan for development of nuclear weapons(核兵器の開発のための計画)○
(2) plan of development of nuclear weapons(核兵器の開発計画)○

解説:(1)ではforが「到達点を含まない方向」を表し、planとdevelopがやや遠い関係であり、また、「developするのがこれから先のこと」というニュアンス。一方、ofを使った(2)では、planとdevelopmentが近い関係であり、「developすることそのものの計画」というニュアンス。
 
 また、上のように、plan(計画)の後はofもforもよいのですが、一方、development(開発)の後にforを使った次の(1)(2)は、文脈上、不適切となります。

(1) plan for development for nuclear weapons(核兵器のための開発のための計画)×
(2) plan of development for nuclear weapons (核兵器のための開発計画)×

解説:developmentとnuclear weaponsをforでつなぐと、「nuclear weapons自体の開発」ではなく、「nuclear weaponsのための(別のものの)開発」と読めてしまう可能性があり不適切。

 このように、「~の」という意味で使うofとforは、どちらでもよい場合もありますが、一方が不適切な場合もありますので、注意が必要です。また、どちらでもよい場合であっても、どのようにニュアンスが異なるかを、知っておく必要があるでしょう。

ニュアンスの違いを知る―広がるfor、イコールのof

 別の例を見てみます。例えば「蒸気発生器の制御部の設計の工程」の場合、次のように、ofとforを入れ替えて使うことも可能です。ofを使った場合とforを使った場合で、どのようにニュアンスが異なるかを知っておくことが大切です。

(1) the process of designing the controller for the steam generator
(2) the process for designing the controller of the steam generator

解説:(1)と(2)のように、ofとforを入れ替え可能な場合もある。訳し分けるとすれば、(1)は「蒸気発生器用の制御部の設計工程」、(2)は「蒸気発生器の制御部の設計の工程」となり、ニュアンスが若干異なる。

 「~の」を表す前置詞ofとforのニュアンスを比べると、forが「<」のように広がるイメージ、つまりforの前後の2つの単語同士が遠い印象を与えるのに対して、ofは「=(イコール)」のようなイメージ、つまりofの前後の2つの単語同士が直接的で近い印象を与える、と考えることができると思います。

使い分け提案

 「~の」と書く際にofかforのいずれを使えばよいか迷った場合、ofとforの両方を使ってみて、再度日本語に訳し分けてみるとよいでしょう。その際、次のような日本語により、訳し分けてみるとよいと思います。日本語と英語は、本来逐一対応するものではありませんが、迷ったときの使い分けの指針にはなると思います。

次の日本語に再度訳してみて、適切かどうかを調べる:
  of =「~という」または「~についての」   for =「~のための」

正確・明確に書くために―基本の意味に忠実に日本語に訳し直すことで確認する

 前置詞の基本の意味を知り、混同しやすい前置詞は、不適切な文脈で使っていないかを、注意して確認することが大切です。前置詞を選択した後、再度日本語に訳し直して不適切でないかを確認することで、混同しやすい前置詞の誤りを防ぎ、正確・明確に書くことができると思います。

【前置詞にまつわる疑問や問題-1. 「~の」を表すofとfor】のPOINT

  • 混同しやすい場合、各前置詞の基本に立ち返って、英文をチェックする。便宜上の使い分け指針を持ってチェックすることも可能。日英(英語を書く)→英日(書いた英語を再度日本語に訳してみる)と行い、入念なチェックにより誤りを減らすことが、スキルアップにつながる。
  • 「~の」を表すofとforは交換可能な文脈も多いが、ニュアンスが異なる。ofは近く直接的な関係を表す一方で、forは比較的遠い関係を表す。ofは「=(イコール)」のイメージ、forは「<」のように広がるイメージ。
  • 便宜上、of =「~という」または「~についての」、for =「~のための」と考えてチェックするとよい。

目次

本連載は、日本工業英語協会による機関紙『工業英語ジャーナル』に2009年6月から2014年6月にわたって連載した「日英翻訳スキルアップ」(中山裕木子著)を元に、加筆修正したものです。

中山 裕木子著 外国出願のための特許翻訳英文作成教本

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