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第4回【日英でニュアンスがずれることがある動詞<apply>】

プラスの意味が込められた日本語とのずれ

 日本語で「応用する」と聞くと、どのようなイメージを抱くでしょうか。多くの人が、何か素晴らしいことに関係すると感じるのではないでしょうか。多くの人が、プラスのイメージを抱くことでしょう。
 一方、対応する英語として挙げられるapplyには、同じようなプラスの意味があるのでしょうか。動詞applyは、「応用する」や「適用する」という意味で使われますが、日本語の「応用」がプラスのイメージを持っているためか、applyにもプラスの意味があると思われがちです。
 ところが実際は、applyは、「単に適用する」「単に当てはめる」「単に利用する」を意味します。当然、文脈によってはプラスの意味を表すこともありますが、この動詞単体では、日本語の「応用」が表すほどのプラスの意味はないと考えられます。
 日本語から直訳された結果、この動詞が、元の日本語の意図とずれて使われることや、不適切な表現として使われることがあります。

 例えば、論文のアブストラクトで、「我々は今回、屈折率マッチング法を流量測定に応用することができた。」と書きたい場合に、applyを使って次のように書いてみます。

例文1(applyを使った直訳):
The refractivity matching method has been applied to measurement of flows. 

 ここで、表したい内容に対して、次のようなずれが生じています。

表したい内容:
屈折率マッチング法を流量測定に応用することができた。(素晴らしい)

例文1が表す内容:
屈折率マッチング法を流量測定に利用した。(単に事実を表す)

 単に事実を表したい場合はこれでよいのですが、プラスのニュアンスを込めたい場合、例文1では、物足りなくなってしまいます。

 そこで、「応用することができた(素晴らしい)」の意味を出すために、例えば能力を表す助動詞canを使ってみよう、などと安易に考えた場合、さらに事態は悪化します。

例文2(助動詞を使ってみる→事態は悪化):
The refractivity matching method could be applied to measurement of flows.

表したい内容:
屈折率マッチング法を流量測定に応用することができた。(素晴らしい)

例文2が表す内容:
屈折率マッチング法を流量測定に利用することができるかもしれない、または、利用することができたはずなのに。(低い可能性や仮定を表す)

 

 この例のように、安易に助動詞を使うと、失敗することがあります。助動詞は、動詞が表す事実に書き手の考えを加えます。また、特に助動詞の過去形は、本来ならば仮定法で使われ低い可能性や仮定を表す(逆説的となる)ことがあるので、さらに注意が必要です。

 このような日本語とのずれを解決し、動詞applyに「適用」「応用」「利用」以上のプラスの意味を追加したい場合、動詞単体に頼らず、修飾語で補うなどの工夫が必要です。

例えば、次のように書くことができます。

例文3(元の日本語にニュアンスを近づける): The refractivity matching method has been successfully applied to measurement of flows.

例文3が表す内容: 屈折率マッチング法を流量測定に利用することに成功した。(素晴らしい)

辞書の定義をざっと読んでイメージを知る

 単語のニュアンスのずれを防ぐためには、こまめに辞書を引くことが大切です。辞書を引き、1から順番に、複数の定義をざっと読みます。辞書の定義1つ1つを見るのではなく、複数の定義を合わせて見て単語の意味を推測すると、その単語の大まかなイメージやニュアンスを理解することができます。各単語には、独立した複数の意味があるわけではなく、1つの核となる意味が存在し、文脈に応じて色々な意味に解釈されるためです。
 使う辞書は、何でもかまいませんが、より深く英語を理解するためには、英英辞書がよいでしょう。例えば、ウェブ上のDctionary.com(http://dictionary.reference.com/(2014年7月現在))を使用することが可能です。誰でも無料で使用でき、単語を入れてクリックするだけで、複数の辞書からの検索結果を見ることができます。Dictionary.com(ディクショナリードットコム)というシンプルな名前を検索するだけで、いつでも利用できて便利です。
 また、次の英英辞書も、オンライン上で利用することができます。
(1) English Cobuild Dictionary (http://dictionary.reverso.net/english-cobuild/):
(2) Oxford Advanced American Dictionary(http://oaadonline.oxfordlearnersdictionaries.com/)
(3) Merriam-Webster's dictionary(http://www.merriam-webster.com/)

Dictionary.comで<apply>を調べる

 一例として、<apply>を英英辞書サイトDictionary.comで調べてみます。複数の辞書からの検索結果のうち、the Random House Dictionaryの定義を次に示します。

1. to make use of as relevant, suitable, or pertinent: to apply a theory to a problem.

解説:1つ目の定義では、make use of(利用する)となっています。ややプラスの意味もありそうです

2. to put to use, esp. for a particular purpose: to apply pressure to open a door.

解説:2つ目の定義では、put to use(使う)で、「単に使う」となっています。

3. to bring into action; use; employ: He applied the brakes and skidded to a stop.

解説:3つ目の定義では、bring into action(作動させる)やuse(使う)で、「単に使う」ことが示されています。プラスの意味はすっかり消えています。

 

 4つ目以降の定義は省略しますが、複数の定義全体を合わせて見ると、「使う」や「何か関連する目的に対して使用する」といった内容が浮かび上がります。また、8つ目の定義8. to place in contact with; lay or spread on:により、「塗布する」といった状況も含まれることが分かります。つまり、「何かを使うこと、何か抽象的なものを(何かに)当てはめること、何かを塗りつけること」を表す動詞だと分かります。辞書の定義全体をざっと見ることで、なんとなく、applyのもつニュアンスを理解することができるでしょう。また、applyが常にプラスのニュアンスを伴って「応用」を表すわけではないことも、分かるでしょう。

applyのありがちな文法誤り

 また、動詞applyを「~を…することに適用する(apply~to…)」として使った場合に、文法誤りがよく見られますので、注意する必要があります。

 次の英文中の文法誤りを探してみましょう。

The authors have applied a high-speed video camera to visualize brittle crack. ××
(著者は脆性亀裂の視覚化に高速ビデオカメラを適用した。)

解説:「~を…することに適用する(apply~to…)」では、toの後は動詞の原形ではなく、動名詞や動詞の名詞形を置くべき。

 

 次のように、誤りを訂正することができます。ところが、訂正後の次の英文は、さらにもう一つ誤りを含んでいます。探してみましょう。

The authors have applied a high-speed video camera to visualization of brittle crack. ×
(著者は脆性亀裂の視覚化に高速ビデオカメラを適用した。)

解説:to visualize brittle crack→to visualization of brittle crackに訂正。もう一つの誤りは、applyの後が「カメラ」つまり「物」。「~を…することに適用する(apply~to…)」では、applyの後には「物」ではなく「技術や方法など抽象的なもの」を置くべき。

そこで、例えば次のように、さらに誤りを訂正することができます。

The authors have applied high-speed imaging technology to visualization of brittle crack. ○
(著者は脆性亀裂の視覚化に高速画像技術を適用した。)

解説:a high-speed video camera→high-speed imaging technologyに変更。

 また、次のように、applyを使わない表現に変えることも可能です。

The authors have used a high-speed video camera to visualize brittle crack. ○
(著者は高速ビデオカメラを使って脆性亀裂を視覚化した。)

解説:「単に使う」を表すuseに変更。この場合、toの後は動詞の原形(to不定詞)のまま。また、useの後の目的語は「物」も「技術」も可能。

正確・明確に書くために―辞書をこまめに引いて単語のイメージをつかむ

 誤った単語のイメージ持ってしまうことを防ぐためには、こまめに辞書を引いて、自分の持っているイメージが正しいかを確認することが大切です。辞書を引く際には、1つ1つの定義を見るのではなく、複数の定義全体を見ることで、その単語の大まかなイメージをつかむことができます。そのような努力によって、動詞の選択ミスやニュアンスのずれを避け、正確・明確に書くことができるようになるでしょう。

【日英でニュアンスがずれることがある動詞<apply>】のPOINT

  • 辞書の複数の定義全体を見ることで、単語の正しいイメージをつかみ、ニュアンスのずれを防ぐ。その際、英英辞書サイトDictionary.com(http://dictionary.reference.com/)などを活用する。辞書をこまめに引くことが、スキルアップにつながる。
  • applyには日本語の「応用」が表すほどのプラスの意味はない。プラスの意味を出したければ、修飾語で補う。
  • 「~を…することに適用する」を表すapply~to…は、文法誤りに注意。toの後は動詞の原形ではなく名詞形。また、applyの後の目的語には、「物」ではなく「技術や方法など抽象的なもの」を置く。誤りを避けるためにapply→useに変えてもよい。

目次

本連載は、日本工業英語協会による機関紙『工業英語ジャーナル』に2009年6月から2014年6月にわたって連載した「日英翻訳スキルアップ」(中山裕木子著)を元に、加筆修正したものです。

中山 裕木子著 外国出願のための特許翻訳英文作成教本

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