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第7回:【前置詞にまつわる疑問や問題―3. 意外に間違え易い前置詞by】

「~によって」を表すbyの落とし穴

 「~によって」を表す前置詞byは、比較的簡単に使いこなせると思われがちです。ところが、日本人が書いた英文を読んでいると、前置詞byが、厳密には誤りとなる表現で使われていることが多いことに気付きました。前置詞byの用法である「動作主の by」や「手段のby」の基本を意識せずに、また文脈に気を配らずに、「~によって」「~により」「~のために」といった日本語を単純に置き換えた場合に、誤ってしまうことがあるようです。
 前置詞byは、一見簡単に思えますが、実は、基本に忠実に、注意深く使う必要がある、奥が深い前置詞です。

「~によって」に使われるbyの誤りと解決法

 「~によって」を表すbyは、「動作主のby」または「手段のby」となります。この2つの使い方のうち、「手段のby」のほうで、誤りが起こることが多いようです。その理由は、前置詞byを「手段のby」として使う場合、主語と動詞の文脈が適切かどうかに注意する必要があること、また、byの後ろには「手段」や「行為」などを置く必要があり、単なる「モノ」を表す名詞を置くことができないこと、が挙げられます。これらを意識せずに書くと、知らず知らずのうちに誤ってしまうことがあるようです。

 「手段のby」の誤りの解決法として、①受動態にすることで「手段のby」ではなく「動作主のby」として使う、②byの後ろの名詞を「手段」を表す名詞に変更するか、動名詞を挿入することで、「手段のby」として正しく使う、③前置詞byを使わない表現に変更する、といった方法があります。

 次に、日本人による英作文の誤り例1~4を見てみましょう。これから示す例は、翻訳者または理工系の学生の実際の英訳例です。それぞれのリライト案を示します。

「手段のby」は主語と動詞が表す文脈に注意

 前置詞byを「手段のby」として使う際には、英文の主語と動詞が表す文脈に注意をする必要があります。
 「~によって(= by)~する」と書くわけですから、「主語が~をする」や「主語が~を~する」のような積極的な文脈であれば「手段のby」が使えますが、「主語が~である」や「主語が~となる」のような消極的な文脈では「手段のby」は使えません。

<誤り例1>

和文:「この新しい加工法を用いたことにより、生産量が増加した。」
英訳: The production has increased by the new method. ×

解説: 「production(主語)が増えた」という文脈では、「手段のby」の使用は不自然(なお、「主語(weまたは他の適切な無生物主語)が、~を増やした」といった積極的な文脈であれば「手段のby」が可能)。「手段のby」を使わずに、by the new method→as a result of using the new methodなどの表現に変更する必要あり。
 または、「手段のby」→「動作主のby」に変更することで文法的誤りを避けてもよい。つまり、「動作主のby」とは受動態で使うものなので、production has been increased by the new method.のように受動態に変更すれば、「動作主のby」として使える。なお、ここまでくると、さらに能動態に変更すれば明確で簡潔になることがわかる。

リライト案1: byを使わない他の表現に
→As a result of using the new method, the production has increased.

リライト案2:受動態に変更することで「手段のby」→「動作主のby」に
→The production has been increased by the new method.(文法的に正しく)
→The new method has increased the production.(さらに、明確・簡潔に)

<誤り例2>

和文:「形状記憶合金とは、冷却すると変形し得るが、加熱するともとに戻る。」
英訳:A shape memory alloy can transform by cooling it, but it returns to its original shape by heating it. × 

解説:
by cooling it, by heating itについて、意味上の主語は「私たち」で、英文の主語はweではなくalloyとなっているので、「手段のby」が正しく使われていない。「動作主のby」に変更すれば文法的誤りを避けられる。つまり、can be transformed by cooling、is returned to the original shape by heatingのように受動態に変更。
 また、byを使わずに、when it is cooled(冷却されると)、when it is heated(加熱されると)とリライトすることで、byの問題が無くなる。この場合さらに、主節と従属節の主語の一致により従属節のit is を省略することで、簡潔になる。

リライト案1: 受動態に変更することで「動作主のby」として使う
→A shape memory alloy can be transformed by cooling, but it is returned to the original shape by heating.

リライト案2: byを使わずに表現
→A shape memory alloy can transform when it is cooled, but it returns to the original shape when it is heated.(具体的に書くことで正しく)
→A shape memory alloy can transform when cooled, but it returns to the original shape when heated.(さらに、明確・簡潔に)

「手段のby」はbyの直後の名詞にも注意

 「手段のby」は、さらに、byの後ろに置く名詞に注意する必要があります。「手段のby」の直後には、「手段」や「行為」などを表す名詞、または動名詞を置く必要があります。単なる「モノ」を表す名詞を置くことはできません。

<誤り例3>

和文:「駆動モータによって、サンバイザは、位置Aと位置Bの間を移動する。」
英訳: The sun visor moves between position A and position B by the drive motor. ×

解説:
「手段のby」の後にくる単語が「手段」ではなく、単なる「モノ」を表す名詞なので誤り。「手段のby」として正しく使うためには、byの後に具体的な動作を表す動名詞を挿入。動名詞の挿入により、たいていの場合は、文法上の問題を避けられる。
 または、受動態に変更することで、「手段のby」ではなく、「動作主のby」として正しく使う。
 またさらに、「駆動モータによって」→「駆動モータによってサンバイザが駆動されると」と解釈し、詳しく書き込んだ表現に変更することも可能。

リライト案1: 動名詞を挿入することで、「手段のby」として正しく使う
→The sun visor moves between position A and position B by using the drive motor.

リライト案2: 受動態に変更することで、「動作主のby」として使う
→The sun visor is moved between position A and position B by the drive motor.

リライト案3: 他の表現を使う
→The sun visor moves between position A and position B when it is driven by the drive motor.

<誤り例4>

和文:「プラスドライバにより、装置を解体してください。」
英訳: Disassemble the unit by a cross-head screwdriver. ×

解説:
「手段のby」の後にくる単語が「手段」ではなく、単なる「モノ」を表す名詞なので誤り。「プラスドライバ」のような「道具」には、「手段のby」は使えない。byの後に具体的な動作を表す動名詞を挿入して文法誤りを避けるか、または「~を使って」を表す前置詞withに変更するなど、byを使わない他の表現に変更する必要あり。

リライト案1: 動名詞を挿入することで「手段のby」として正しく使う
→Disassemble the unit by using a cross-head screwdriver.

リライト案2: 前置詞byの使用をやめて、他の表現を使う
→Disassemble the unit with a cross-head screwdriver.

英文完成後にチェックすることが重要

 前置詞byを初めから正しく使うのが難しい場合、完成した英文中の前置詞byが正しく使われているか、次の方法にしたがってチェックすると良いでしょう。つまり、英文中のbyが、「動作主のby」として使われているのか「手段のby」として使われているのかをきちんと把握するとともに、それぞれ「動作主のby」または「手段のby」として正しく使えているかを、次の方法で、【前置詞byのチェック表】に基づき、チェックすると便利です。

<動作主のby>
 「動作主のby」は、受動態で使います。そこで、完成した英文が受動態から能動態へ変換可能かどうかを調べれば、「動作主」のbyとして正しく使っているかどうかが分かります。
 正しく使っていなかった場合、解決法は、①「動作主のby」として正しく使うために受動態にリライトする、②次に「手段のby」について調べる、となります。

<手段のby>
 「手段のby」は、「主語が~をする(自動詞)」や「主語が~を~する(他動詞)」または「主語が~される(他動詞・受動態)」という文脈で、「手段」や「行為」を表す名詞や動名詞の前に置いて使います。「主語が~である」や「主語が~となる」といった文脈では使えません。また、道具をはじめとする単なる「モノ」を表す名詞の前には置けません。
 したがって、文脈を調べるとともに、byの直後に名詞がある場合、それが「手段」や「行為」を表す名詞かどうかを調べれば、「手段」のbyとして正しく使っているかどうかが分かります。
 正しく使っていなかった場合、解決法としては、①byの後が単なる「モノ」を表す名詞の場合、byと名詞の間に動名詞を挿入する(文脈によっては、「主語が~をする」「主語が~を~する」「主語が~される」の形にリライトした上で)、②by以外の適切な前置詞に変える、③前置詞を使わない他の表現に変える、などが挙げられます。

 次に、【前置詞byのチェック表(保存版)】を示します。

【前置詞byのチェック表(保存版)】

ステップ①
「動作主のby」として正しく使っているか?つまり、受動態から能動態への変換が可能か?
①-1 可能な場合
 →「動作主」のbyとして正しく使っているのでOK
①-2不可能な場合
 → NG →正しくなるようにリライト(受動態に変える、など)
 →またはステップ②へ

ステップ②
「手段のby」として正しく使っているかどうか?つまり、byの後が動詞ing+名詞、または「手段」や「行為」を表す名詞か?
②-1 byの後が動詞ing+名詞または「手段」や「行為」を表す名詞(また文脈が適切)の場合
 →「手段のby」として正しく使っているのでOK
②-2 byの後が名詞であり、その名詞が「手段」や「行為」を表す名詞でない場合(また文脈が不適切な場合)
 → NG → 正しくなるようにリライト(適切な文脈に変更した上でbyの後に動名詞ingを挿入する、by以外の適切な前置詞に変える、前置詞を使わない他の表現に変える、など)

正確・明確に書くために―簡単と思われがちな前置詞表現に注意をする

 文章全体を見ずに部分的に日本語から英語に単純変換した場合に、完成した英文が誤ってしまっていた、とういことはよくあります。一見簡単だと思われがちな前置詞にも、意外な落とし穴があることに注意して、入念にチェックをすることが大切です。英文全体を見て注意深く表現を選択することで、正確・明確に書くことができます。

【前置詞にまつわる疑問や問題―3. 意外に間違え易い前置詞by】のPOINT

  • 前置詞byは、「~によって」の直訳により誤ってしまうことがある。完成した英文を入念にチェックしてbyを正しく使うこと、文脈によっては前置詞を使わない他の表現も柔軟に取り入れることが大切。部分的な定訳に飛びつかないように注意することが、スキルアップにつながる。
  • 「~によって」に使われるbyは「動作主のby」または「手段のby」。「動作主のby」の場合、受動態の文章にて正しく使われているかをチェック。「手段のby」の場合、文脈が適切か、また動名詞や手段を表す名詞の前に置かれて正しく使われているかをチェック。チェック結果がNGの場合、チェック表にしたがって、「動作主のby」または「手段のby」として正しくなるように変更するか、または他の表現を選択。

目次

本連載は、日本工業英語協会による機関紙『工業英語ジャーナル』に2009年6月から2014年6月にわたって連載した「日英翻訳スキルアップ」(中山裕木子著)を元に、加筆修正したものです。

中山 裕木子著 外国出願のための特許翻訳英文作成教本

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